ご挨拶

日本慢性看護学会 第13回学術集会
会長  池田 清子
(神戸市看護大学・療養生活看護学領域・慢性病看護学分野)

 本学会のメインテーマは、『地域のレジリエンスを高める慢性看護』としました。

 レジリエンスの概念は、これまで主に精神医療や災害の領域で使われています。レジリエンスはこれまでの発病モデルと対比され、自然治癒(回復)モデルとされています。

 今、日本は超高齢社会、少子社会を迎え、医療や福祉の財源やマンパワーも危機的な状態にありますが、これらのストレス(脆弱性)に対する反発力、回復力、復元力について考えてみたいと思いました。さらに、レジリエンスが目指すものは、元の状態に戻るだけでなく、より良いシステムや社会とされています。魅力的なこの概念に魅せられ、今回のテーマと致しました。また、レジリエンスは個人に焦点をあてた研究が多くみられますが、これからは地域のレジリエンスに着目することが重要であると考えました。

 また地域という言葉は、時に場所であり、環境であり、集団を指しています。地域で暮らす慢性病者というとき、私たちは個人(病者)と地域を分けて考えようとしますが、これから個人は地域の一部であり、病院も地域の一部であるという考え方が必要ではないでしょうか。

 この視点にたつと、慢性病者(個人)のレジリエンスを高めることは地域のレジリエンスを高めることになります。病者と家族は豊かな歴史と経験をもち、一見逆境にみえる環境のなかでも逞しく生きぬく知恵をもっています。それは病者が地域とともにダイナミックに生きている姿であると思います。

 超高齢社会では、認知症・慢性疾患・がんのうち複数をかかえながら生活を送る方も多く、また独居の割合も高くなっています。これら複数の疾患マネジメント力を高め重症化予防することは、慢性看護の一つの重要な課題です。

 また我が国では2025年そして2035年を目前に控え、国民一人ひとりが人生の最期のときまでどのように生きたいか、どこでどのように暮らしたいかについて意思決定をする時代になりました。これまでがん疾患で普及している緩和ケアやエンド・オブ・ライフの考え方は急速に慢性疾患にも広がりをみせています。エンド・オブ・ライフケアの主人公は住民であり、ケアの実現にむけ住民・医療福祉職・行政などが参画する時代となります。

 本学術集会では、これらの変化にしなやかに立ち向かう地域のレジリエンスを実現する考え方や実践をとり挙げたプログラムを企画しました。

 本学術集会を通して、『地域で人が健やかにしなやかに生ききる』ためには慢性病看護が地域の健康と安寧に貢献する重要な役割を担っていることを再発見し、今後皆様がそれぞれの地域で新しい慢性病看護の実践活動を生み出されることを期待します。

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